個人事業主や会社経営者の方で、iPadを購入したという場合に、その購入費を経費にすることができるのか気になっている方も多いかと思います。
iPadは安いもので5万円程度、値段がするものではオプションなどによっては20万円近くするものもあります。iPadの支払いを経費に入れられるのであれば税金負担を多少なりとも軽減できますが、実際には経費として認められるのでしょうか。
ポイントは、
・行っている事業との関連性
・個人使用との明確な区分
となります。
行っている事業との関連性
まず、行っている事業との関連性がポイントとなります。
iPadを使用するクリエイティブな業種
・デザイン関連
・イラスト関連
・撮影関連
などiPadのアプリを使用して行うような業種、またiPadを使用して撮影、編集を行う業種であればまず問題なく経費として認められることでしょう。
業務の中でiPadを使用している
また、もしそのようなクリエイティブな業種でなくても、このようなケースでiPadを使用していることもあるかと思います。
・レジとしてiPadを使用
・注文用のタブレットでiPadを使用
・営業資料のプレゼンのためiPadを使用
このような場合にももちろん経費として認められます。最近ではアプリも充実しているため、iPad内のアプリによって様々な業務を行っているケースも多くあります。
<関連>
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個人使用との明確な区分
では個人として使用しているiPadを、業務でも使用しているという場合にはどうなるのでしょうか。
iPadを経費として考える上で問題となるのは、iPadは様々な用途で使用できるということです。上記のような業務で使用することもできますし、アプリを入れれば漫画を読むこともできます。
そのように個人での使用と業務での使用が混在している場合には、自家消費分との按分が必要となります。
按分の計算方法
ではiPadの業務部分の按分計算はどのように行えば良いのでしょうか。このような按分計算をする際には、使用日数や使用時間で決めることが一般的です。
1日の使用時間の中で業務として6時間、個人として4時間程度使用しているということであれば、6割を経費として計上することができます。
8万円でiPadを購入したのであれば、80,000円×60%の48,000円部分を経費とすることができます。
購入時の仕訳
消耗品 48,000円 / 普通預金 80,000円
事業主貸 32,000円
自家消費部分は「事業主貸」という科目を使用します。
按分の合理的な根拠が必要
按分計算により業務部分を経費計上する際には合理的な根拠が必要となります。国税庁からはこのように言われています。
当該資産の取得に係る課税仕入れに係る支払対価の額は、当該資産の消費又は使用の実態に基づく使用率、使用面積割合等の合理的な基準により計算するものとする。
家事共用資産の取得
iPadの勘定科目は?
iPadを経費計上する際には、10万円未満であれば「消耗品」、10万円以上であれば「工具器具備品」の科目を使用します。
10万円未満:消耗品費
10万円以上:工具器具備品
工具器具備品として資産に計上された場合には、耐用年数4年として減価償却を行っていきます。
<参考>
事務機器>通信機器>電子計算機>パーソナルコンピューター(サーバー用のものを除く。)>4年
耐用年数(器具・備品)(その1)
消耗品として処理する場合の仕訳
金額が10万円未満で、消耗品として処理する場合の仕訳はこのようになります。
消耗品90,000円/預金90,000円
工具器具備品として処理する場合の仕訳
一方で、10万円以上で工具器具備品として処理する場合の仕訳はこのようになります。
工具器具備品150,000円/預金150,000円
この支払いは一括で経費となるのではなく、一度「資産」として計上され、期末に「減価償却費」として按分した金額を経費としていきます。期末に行う仕訳としては、このようになります。
減価償却費37,500円/工具器具備品37,500円
※こちらは定率法を使用して、直接法により資産を直接減額する方法を使用した例になります。
30万円未満の備品を特例で一括で経費にできる特例
30万円未満の減価償却資産については、令和8年3月31日までの間に所得したものについて、一定の要件のもと取得価格を全額損金にすることができる特例があります。要件としては、以下のものがあります。
・資本金または出資金が1億円以下
・常時使用する従業員数が500人以下
・青色申告を行なっている
・年間300万円が限度
国税庁:No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
この特例を使用することで、ipadの購入価格が30万円未満であれば、一括で経費にすることも可能となります。
少額減価償却資産の特例を使用した場合の仕訳
少額減価償却資産の特例を使用する場合の仕分けとしては、まず備品として一度資産計上します。
備品280,000円/預金280,000円
そして期末に、減価償却費として全額を損金計上します。
減価償却費280,000円/備品280,000円
このように、10万円を超える資産の購入であっても、少額減価償却資産の特例を使用することで一括で損金計上することもできます。
iPadが経費として認められないケース
iPadが経費として認められないケースとしては、先ほどご紹介した個人使用との明確な区分ができていないような場合です。また按分計算の根拠が合理的ではない場合には、その部分は経費として認められません。
税務署はあくまでも「実態」で見るため、例えばiPadに入れてあるアプリが個人的なものばかりである用のな場合には個人としての使用割合が高いと見られてしまう可能性が高くなります。
iPadを否認されないために
iPadや携帯、スーツなどもそうですが、会社や工場に置きっ放しというわけではなく家に持ち帰ることができて、家でも使えるような物に関しては税務署は厳しい目で判断します。
経費として否認されないためにはこれらのことを意識しておきましょう。
・業務用として完全に切り分ける
・「按分計算」と「合理的な根拠」
業務用として完全に切り分ける
iPadを個人用と仕事用と2台持っているような場合で、完全に業務用として切り分けることができれば、全額を経費として計上することができます。もちろんその場合、個人使用部分については経費として計上することはできません。
按分計算と合理的な根拠
業務で使用しているiPadを個人でも使用しているという場合には必ず「按分計算」をし、「合理的な根拠」を示せるようにしておきましょう。使用時間で計算するのか、日数で計算するのかによっても金額が変わってくるため、どの基準を使用したら良いのかは慎重に考える必要があります。
例えば使用時間で業務で6時間、プライベートで4時間という場合には6割を経費にできますが、日数で考えると1週間のうちの5日であるという場合、約7割を経費とすることが、100,000万円のiPadであった場合には1万円の差額が出てきます。
使用時間:6割(10万円の場合には6万円が経費)
使用日数:7割(10万円の場合には7万円が経費)
もちろんこちらも実態が最優先となりますので、実際に使用している割合を最も重視して考えることが必要となります。
まとめ
今回はiPadを経費として計上することができるのかということについて解説しました。
ポイントは、
・行っている事業との関連性
・個人使用との明確な区分
となります。
また勘定科目は10万円未満の場合には消耗品費、10万円以上の場合工具器具備品を使用し、減価償却として経費に計上していくということを覚えておきましょう。


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